山 行 報 告
2009/10/24 谷川岳・マチガ沢〜東南稜   メンバ:内山、鈴木  記録:鈴木
【コースタイム】
 05:40ロープウェー駅〜06:00マチガ沢出合い〜06:40巌剛新道第一見晴らし下降点07:00〜07:10マチガ沢入渓点〜一ノ沢分岐の大滝…三ノ沢分岐の滝壷…ゴルジュ帯入り口…四ノ沢分岐…要ノ滝…12:00東南稜取付き…16:00オキノ耳直下の稜線16:20…西黒尾根…ロープウェー駅18:30

【記 録】
 ロープウェー駅で仮眠していると、周りで物音がし始めたので、目を覚ました。ヘッテンを着けて、まさに出発しようとしているパーティがいた。出遅れてしまったような気がして、少し急ぎ気味で出発の準備をする。

 ロープウェー駅を出る頃にはもう既に明るみ始めていたので、ヘッテンはいらない。出遅れた時間を取り戻そうと、少し早いペースでマチガ沢の下降点まで行く。

 第一見晴らし台からは、これから遡行するマチガ沢〜東南稜の明瞭なスカイラインまでがはっきりと見て取れる。内山くんと「あれだっ!!」と確認し合い、いよいよ、モチベーションが上がってきた。

 沢靴に履き替えて登はん準備を済ませ、マチガ沢下降点の踏み跡を辿る。すぐに一ノ沢分岐の大滝が現れ、左側の階段状のスラブを登る。更に四段の滝を登り、正面に見えるゴルジュ帯を目指す。

 水量はほとんどなく、スラブがカラカラに乾いているので、沢靴の底のフェルトも全く濡れていない。これならゴム底のほうが歩きやすかったかもしれないが、スラブが濡れていたら、なかなか手ごわそうだ。

 谷川のスラブは長年雪に洗われている為だと思うが、岩の表面がツルツルしてフリクションが独特の感じがする。歩き慣れるまで少し時間がかかる。

 いよいよゴルジュ帯に突入すると、沢登りらしい様相になってきた。時期的に水流が乏しいのだろう、ほとんどの滝が直登出来た。チョックストーンの滝やチムニー滝などを登って、インゼルと呼ばれる二手に分かれる沢の左側を進む。

 しばらくして四ノ沢との分岐も無事に通過し、東南稜がいよいよ目前に迫ってきた。この間、悪い滝が一箇所あった。右側から巻いたが、比較的新しい残置スリング4本を次から次へと掴んで、無理矢理に上がった。

 チョックストーンの滝で直登するのもかなり悪そうに見えたが、あるいは直登したほうがよかったかもしれない。

 天候は晴れ予報だったが外れ。太陽は雲に覆われていた。それでも比較的空が高かったので、雨が降ったりガスったりする心配はなさそうだ。沢でロープは出さなかったから、早い時間で遡行できていた。

 そのまま遡行を続けていくと二俣に出たが、左側が主水流に見えたこと、先行パーティ1組が左俣にいたこと、右俣が六ノ沢であろうと判断したことから、左俣を進んでしまった。

 おそらくこの地点で六ノ沢の分岐は過ぎていて、この二俣が要の滝だったのかもしれないが今だ判然としない。そのままぐんぐん沢を詰めていくと、なんとあるまじきことに、目の前に稜線が現れたが登る東南稜がない。

 「あれっあれっ?!」と、慌てて周りを見渡すと、小尾根を挟んで右壁の凹角にスリングが2つぶら下がっている。あ…(しばらく呆然)。既に東南稜の3ピッチ目の高さまできていた。

 東南稜取付きに取付くのに小尾根を越えなければならないから、沢をクライムダウンで下りながら踏み跡を探す。先行パーティがちょうど東南稜の取付きにいたので、尾根のどこかをトラバースしたはずだ。内山くんと手分けして探してみるが、なかなかそれらしき踏み跡が判然としない。

 沢を分岐まで降りようかとも考えたが、なんとか無理矢理にトラバースして右俣に出ることが出来た。尾根を下降した地点から東南稜の取付きは目と鼻の先だったのでひとまず安心したが、プチプチと切れる枯れ草を掴んでのトラバースで、だいぶ具合が悪くなった。

 取付きで準備を済ませ、気を取り直し、登はん開始。

 1ピッチ目/鈴木
 トポ通り傾斜の緩い凹角を10m上がり、左ハングにぶち当たったところから、右スラブに移る。濡れていることが多いらしいが、乾いていたので特に問題はない。クラック下のテラスでピッチをきるのを忘れ、左側の凹角手前でピッチをきった。

 2ピッチ目/内山
 クラックと凹角どちらからも行けるが、1ピッチ目きったのが凹角下になったので、内山くんには凹角を上がってもらう。この凹角が以外にもクセ者で、フォローであがった鈴木はなんとA0をしてしまった。本チャン初リードの内山くん、お見事でした。

 3ピッチ目/鈴木
 本来の2ピッチ目の後半凹角からスタート。凹角には2本スリングが垂れているが、なんだか登る気にはなれないので、そのまま左側にトラバースし、リッジを直上し凹角上のテラスに出る。リッジは快適そのもの。

 4ピッチ目/内山
 ホールドの豊富な傾斜の緩いリッジを上がり、小ピークに出る。ここから先はU〜V級程度の簡単で快適なクライミングだがリッジだと、さすがに風を直に受けて、ビレイ中はかなり寒い。この辺りから内山くんと鈴木は、顔を合わせても「寒い、寒い」という言葉しか出てこない。

 このピッチで東南稜の終了点となり、あとは踏み跡を辿ってオキノ耳とトマノ耳の稜線に出るのが一般的な東南稜のルート。

 5ピッチ目/鈴木
 そのままオキノ耳山頂に向けてロープを伸ばす。簡単なリッジを引き続き直上し、キレットを超え、ピッチを切る。この辺りになると、すぐそばの稜線を人が歩いていて、声もはっきりと聞こえる。
 6ピッチ目/内山
 どこから上がるかに迷う。正面の凹角に取付くが、上がハングになっているのでやめて、ビレイしている右側のリッジ壁から上がることにする。出だしが少し立っているが、上がりきると1級程度のブッシュの水平移動になる。

 7ピッチ目/鈴木
 ブッシュ。ここからはもうロープもなくてよさそうだが、そのままぐんぐん伸ばしきった先テラスになっているところで、登はん終了にした。あとは踏み後を辿ると、山頂直下の稜線に出る。
 
 内山くんと握手して時計を見るともう既に16:00になっていたので、休む暇もなく急いで下山準備に取り掛かる。

 あと1時間で陽が暮れるので、西黒尾根の鎖場まで小走りで降りる。祐美さんから貰った5.10のアプローチシューズのおかげで、谷川のツルツルした岩でも滑ることなく走れる。

 日が落ちる直前、少し立ち止まってマチガ沢を振り返ると、東南稜が谷川の薄赤く染まった空に向かって、そのスカイラインを浮き彫りにしている。 満足。

 あとは、お腹が空いていたので、あしま園に向かって一目散に下山した。